次に、学校教育における農業体験等を通じた食育についてお伺い致します。
スーパーに行ってお金を支払えば、食べ物はいくらでも手に入るということは、決して当たり前のことではありません。
令和5年度の我が国の食料自給率は、カロリーベースで38%、生産額ベースで61%であり、食料の多くを海外からの輸入に依存している現状にあります。
今年5月には、改正食料・農業・農村基本法が国会で成立し、「食料安全保障の確保」が、法律の基本理念として新たに位置づけられました。
自給率の向上に向けては、「なるべく国産品を選んで購入する」等、まさに消費者の選択と行動が、我が国の「農業」と「食料」を守ることに繋がるものであり、「食料自給率向上の重要性」について、理解を促進するべく、消費者への情報提供や、普及・啓発活動を行うことが重要であると考えます。
特に、食料基地である北海道にあって、人口196万人を擁する大消費地札幌が果たすべき役割は、極めて大きいものと認識しております。
令和5年10月2日の厚生委員会で、「第4次札幌市食育推進計画」について、「食料自給率向上に向けた理解の促進」という観点から、「大消費地」としての札幌市における、食育の在り方について私から質問したところ、保健所長のご答弁では、「食料自給率の維持・向上が重要であると認識しており、市民が農業や食料についての理解を深めていくことが必要である」とのご認識をお示し頂き、その上で、「食育推進計画における基本的施策として、『農との触れ合いを通じた食育の推進』を図っていくとのことでございました。
学校教育の現場に目を向けますと、札幌市教育委員会では、小学校において、実際に稲作、畑作、酪農などの農業体験を行うことを通して、食の大切さへの理解をさらに深めることを目的に、「体験活動の実践研究事業」として、平成21年度に「さっぽろっ子農業体験事業」を開始致しました。
市立小学校年間30校を対象に、札幌を含む連携中枢都市圏の農家等で稲作、畑作、酪農などの農業体験が実施され、一例ですが、ある小学校では5年生が新篠津村で5月に田植え体験、10月に稲刈りと脱穀を体験し、12月には精米されたお米が子ども達に贈呈される贈呈式が行われる等、まさにお米が出来上がるまでの過程と、携わる方々の努力や苦労を身をもって体験することができる非常に意義深い機会であったと認識しております。
子ども達の中には、この体験をきっかけに農業に関心を持ち、大きくなってから新篠津村の農協に就職した方もいらっしゃるとのことで、まさに、学校教育の中で、このような機会を確保することが、いかに都市に住む子ども達にとって貴重な経験であるか実感するところでございます。
しかしながら、教育委員会では、平成30年度をもって、バス代の助成を含む本事業を終了し、その翌年度からは、まちづくり政策局が作成した「農業体験学習受入可能団体一覧」を各学校に情報提供するに留まっているとのことで、例に挙げました新篠津村の受入先におきましても、事業終了後は農業体験に来なくなってしまったとのことであります。
札幌市が食育推進計画の中で『農との触れ合いを通じた食育の推進』を掲げている中で、取り組みを推進するというよりは、むしろトーンダウンしているように感じられ、甚だ遺憾に思うところでございます。
そこで、質問ですが、札幌市としては「食料自給率の維持・向上が重要であると認識しており、市民が農業や食料についての理解を深めていくことが必要である」とのご認識のもと、「第4次札幌市食育推進計画」の中で「農との触れ合いを通じた食育の推進」を図るとしておりますが、教育委員会では、学校教育における農業体験等を通じた食育の重要性をどのように認識されているのか、教育長にお伺い致します。
また、「さっぽろっ子農業体験事業」のように、バス代の助成を含む、充実した農業体験の機会を、より多くの学校で引き続き提供できるよう、研究事業の成果を踏まえて、更なる発展を検討するべきと考えますが、教育長のお考えをお伺い致します。
<答弁の趣旨>
〇農業体験等を通じた食育は、子どもたちに、食べ物を大切にする心や生産等に関わる人々への感謝の心を育む上で、大変重要なものと認識。
〇「さっぽろっ子農業体験事業」においては、研究推進校30 校を指定し、そこで得た実施方法を普及・啓発したことにより、その後、小中学校合わせて100校程度まで外部と連携した農業体験が広がってきたところ。
〇また、食の循環や環境を学ぶ取組である「さっぽろ学校給食フードリサイクル」においては、学校給食の生ごみから作った堆肥を、約200 校の小中学校の畑で活用し、栽培や収穫体験等を行っているところ。
〇教育委員会としては、今後も、これらの取組を積極的に推進するとともに、 ICT等を活用し、生産者の思いに触れる機会の創出を促すなど、食の重要性について理解を深める学びの充実を図ってまいる。
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